下弦霧ちゃん定点カメラの2月《一幕》

最初からタイトル詐欺!

 

このエントリは「1月末に髑髏城の七人シーズン月《下弦の月》を初めて観た中途入社の新米おたくが霧丸役の松岡広大くんに転がり落ち霧ちゃん定点カメラとして過ごした2月」が本当のタイトルです。(直帰率100%狙える…)

自分でもよくわからないままとりあえず松岡霧ちゃんの素晴らしさを言わずにいられない使命感がありTwitterをフォローしてくださっている方々には諸々お目汚ししてきましたが、そろそろ終わって時間も経ってきたし一気に吐き出すことにしました。

 多分いろいろ書くと思いますが、言いたいことは「私の目に、そしてあの舞台を愛した人たちの目に映る場所で、霧丸として生きてくれて本当にありがとう。」これだけなんです。(要するに松岡くんを褒め称えるエントリーなのです)

 以下は、そこに帰結するためのおおいなる蛇足。

注意書きをするほどでもありませんが、記憶力と読解力を生まれたときから三途の川に捨てているおたくなので正確性の保証はできませんし全て主観です。あらゆる言葉の前に「私にとって」を付けて読んでいただけると幸いです。

 わたしなんかが松岡くんの素晴らしさを語ろうとしていいんだろうかとここまで書いて急に不安になってきたけどいいねを押してくださった方のために書くから…許してください…。

で、これは懺悔ですが一幕だけで一万字超えたので一旦あげます…。二幕はまたいつか。一幕で書ききれなかった細かい話もそっちでしたい(いつになるのか…)

わたしが思う霧丸の立ち位置

まず、下弦の月における霧丸の立ち位置を私がどう捉えていたか、がないと始まらない気がするので先に書きます。

ええと、霧丸は、拠り所だったと思います。柱だと思って見ていたけれど、今考えるともっと柔らかくて抱きしめられる温度の言葉が相応しい気がするので「よりどころ」という表現がいちばん近いかな。

そう思う理由のひとつ。霧丸は多くの人にとって「戦う理由」になります。

 極楽太夫は言います。「あんたみたいな子救えなきゃ、この里作った甲斐がないよ」と。そして、最後、生きる力を失いかけた捨之介にこうも言います。「ここまで駆けつけた、霧丸の気持ち考えなさい」

兵庫は言います。「おめえ、面付きが変わったぜ。そういう顔したやつを、俺は見過ごせねえんだよ」

渡京は言います。「お前、また俺が裏切ると思っただろう。その予想を全力で裏切ってやったのだ!」

捨之介は言います。「おめえみてえな若えのが、恨み募らせてんの俺は見てられねえんだよ。それじゃあ昔に、縛られちまう」

 (当然ですが台詞はすべてうろ覚えなのでニュアンスだけ感じてください…) 

極楽太夫にとっての霧丸

太夫にとって、無界は「あんたとあたしで築き上げた」己の子供と呼べるような里です。その里を作った甲斐がないと、孤独に進もうとする少年に笑って伝えるシーンはとても印象的でした。

太夫は焼け落ちた無界を出て、髑髏城に向かう。里はなくなった。共に生きてきた雑賀の仲間たちも失ってしまった。でも、霧丸が生きてたから、太夫は失わなかったんですよ。「この里作った甲斐」を。

だから「霧丸の気持ち考えなさい」って捨之介に言ったのは、とてもとても強くて優しいひとことだと思うの。あんたには、この子がいるよって、捨之介に教えてくれた。それは太夫にとっても同じ。失わなかった里の誇りは、近くで生きてる。きっと太夫にとって、ひとつの暖かな拠り所だったんじゃないかと思います。

兵庫にとっての霧丸 

兵庫にとって、荒武者隊は自分を侍にしてくれた人たちでした。農民として生きている中で、正義のために振るった力で村八分にされてしまった兵庫の、足元が見えない感覚を木村了さんの兵庫はとても丁寧に演じられていたと思います。兵庫は恋に生きているキャラクターだったけれど、自分のコンプレックスと戦っていた人でもあると思う。自分を慕い、アニキと呼ぶ人間たちの中にいれば、兵庫はいくらだって強くなれた。荒武者隊の中にいるときがいちばん、兵庫は楽に息ができたんじゃないかと思います。だから、「アニキって言え!」はあんなにも悲痛に刺さったし、人の声があんなに刺さるなんて思わなかった。

その兵庫が、霧丸を見捨てないことを髑髏城に向かう理由にしたのは、わたしにとってかなりの衝撃でした。でも、霧丸のお陰で兵庫は、恨みや憎しみで髑髏城に向かわなくて良かったんだなあって思うと、あの城で兵庫が自暴自棄にならずに済んだことをとても有り難く思う。この時の兵庫にとって、霧丸はとてもやわらかな拠り所だったと思うのです。

 渡京にとっての霧丸

渡京のひとことは、不器用な渡京の精一杯の愛情が詰まったいいせりふですよね。渡京という人は、ずる賢くて嫌なやつだけど、線引きがとてもしっかりしていて、髑髏党が犯したことが渡京の中でその線を超えてしまったときに選ぶべき正義が明確だった。その正義が何だったかっていうと、霧丸なのかなあと。自分のために生きてきた渡京。裏切るのは裏切られる方が悪いと信じてきた渡京。それが、「俺は今まで逃げるばかりで戦ったことがないので自分の力がよくわからない」と言いながらも「退け霧丸」って霧丸を安全なところにおいて自分が戦うんですよね(もちろん、このあとの流れを作るための芝居だったとしても、命のリスクはとても大きい行為だったわけで)。「戦ったことがなかった」渡京が命の危険を犯して髑髏党に刀を向けたとき、渡京にとって霧丸は動かぬ正義の拠り所だったと思うのです。

 捨之介にとっての霧丸

そして捨之介。捨之介と霧丸の話は切っても切り離せないので、この後も沢山お話すると思いますが、捨之介がずっと縛られ続けた過去をそのまま纏って現れたような存在が霧丸でした。あんなにカラッと執着がなさそうに現れるのに、捨之介は「どうして髑髏党に追われてる」と積極的に聞いた。この時点で、髑髏党への関心を捨てきれていない。捨之介は、きっとあのとき、霧丸という存在に入り込もうとするべきじゃなかった。固く閉めたはずの心の扉に合う鍵を、拾ってしまった。拾之介だった。(宮野さんすぐひろいのすけっていうよね。笑)

わたしは、捨之介は霧丸に触れる間、霧丸と向き合う間、愛情と共に少しの罪悪感と辛さがあったんじゃないかと思う。お前は俺のようになるなよ、お前は俺のようだ、そういう声が聞こえるかのように、霧丸を守り慈しむ捨之介はまるで親のようでしたね。

 捨之介は、何度も何かを捨てようとします。でも、捨てられないものが多すぎて、捨ててはいけないものを捨てようとしてしまう。何も捨てられない自分を自嘲するように笑う「へへっ」という笑いは、純白なのにいつも影が滲んでいました。その影が怖くて、捨てようとする捨之介の手に、命を握らせるのが霧丸の仕事だったように思います。霧丸の手を包むとき、捨之介は自分の手から離れようとする自分をまた強く握り直すことができていたと思う。霧丸が鏡であったからこそ、捨之介は自分から目を逸らさずにいられた。それは、前向きな事実である反面、とても辛い作業だったんじゃないかと、少し同情する。あんなに正しい存在が目の前にいるのは、きっとにがい。捨之介にとっての霧丸は拠り所なのだけど、それはもうそのもの、生きる意味を、霧丸に預けていたと思うから。薬は、いつもにがいんだ。

ガンテツちゃんといんべえちゃんに関してはあまり関わらないので省きますごめん。

霧丸、すごい愛されてるんだよね。本当にずっと愛されてる。松岡くんの霧丸を、遠慮なく愛せて幸せだったなあと、今になると思う。

舞台を観ている間、本当に霧丸に夢中でした。霧丸が何か行動を起こすたびに、感動して息ができなくなりそうでした。この舞台に推しと呼べる人は出ていなかったけれど、観ている間、霧丸は王様に思えた。わたしはその熱心な信者でした。その話をします。(まだ本題に入ってないので3000字を超えました…語彙力がないと無駄に文章が長くなるので悲しい…)

冒頭、関東荒野

コミカルかわいい霧ちゃんのお時間。ステアラってピューロランドだったっけ?バッドばつ丸ならぬバッド霧丸!アニメのキャラクターのようによく動いてハイトーンのお声を聞かせてくれる霧ちゃんかわいいワールドへようこそタイム。

どりゃーって出てくる時の跳躍の高さに、荒武者隊にくっついてかぶきものっ!っておくちに両手を当てて言う時のハイパーキュートさ、渡京に捕まった時のギラァ…としたお顔はこどもの恐竜だし捨之介と出会ってからのオロオロした素直なこどもっぽさとか、ここは霧丸の明度が思いっきり明るくて良かったですね…。あとボッコボコにしてやるぜ!の時は姿勢が低いので見える席が限られていたけどあの時の顔しぬほどかわいかったので一度でも間近で観れてよかったです…広大くんのウインドミルに風を切る音がついてきてたのも良かったしテテン!って音付いてるのも良かったです。

このシーンの霧ちゃんから伝わってきたのは、この時の霧ちゃんにとって生きることは挑戦だということ。

まず第一声「オレ一人に寄ってたかって大騒ぎだな髑髏党」の時の上がった顎の角度と上がる声が相手を挑発してるわけだけど、そもそもこれは「子供一人にこんなに手こずってるなんて」という髑髏党のひとことに対して喧嘩売ってるんだよね。

その時の霧ちゃんの目線と口の尖らせ方が最高に生意気で大好きだったんですが、このときちゃんと少しだけ目が不安そうなのがいいなと思う。落ち着きなさそうに動く足は虚勢の中でごまかせてない霧丸の緊張と不安。

その後、荒武者隊と合流してから一緒に見得を切る霧丸、飛び回って顔全体で笑って必死の顔で「ですよねえ兵庫さん」っていうの、ちょっと過剰なほどじゃないですか。観てるだけで「演技」ってわかる「演技」がこの中にある。

霧丸は、今まで人に媚びたことなんてなかったと思うの。持ち上げて守ってもらおうなんて、生死を意識するまで考えたことなかったんじゃないかなあ。でも、この時の霧丸は自分の誇りを一旦捨てて荒武者隊に付いていくって決めてる。縋る先だったんだろうなあと思うと、「弱いから死ぬ、自業自得じゃねえか」って冷たい目で言葉を吐く時は霧丸だって傷ついてるんだろうなあって思う。

このシーン、捨之介と初めて出会った時の霧丸の表情が見えないようになっているのがよくできているなあと思います。広大くんはこのときの衝撃を背中で表現するしかなかったわけだけど、後ろに下がっていく時のジリジリした足の頼りなさがこの瞬間の霧丸が感情を押されてしまっていることが垣間見えていいよね。

ここで霧丸は初めて捨之介と出会うわけだけど、「まあ見てなって、あいつらが本当に弱いかどうか」の言葉をちゃんと受け止めて目を開いて見てる顔は多分、素。霧ちゃんは人間の本質に対して鋭い嗅覚を持っているから捨之介の言葉は最初から「信じていい」って思ってることが伝わってきて好きだったなあ。

だって、捨之介が「いい天気だなあ」って言ったら、霧ちゃん素直に空を仰いだんだよ。くちあけて、見えた空は青空だったろうか。すぐに雨雲にかき消されたとしても、霧ちゃんに空を見上げることを教えてくれて、ありがとう捨之介。

 髑髏党を退けたあと、体力が切れて蹲るときに一生懸命せなかを擦ってる捨之介がいいよねえ。このとき、霧ちゃんがきっと触れることを恐れていた優しさは弱った心と体にどう染みただろうか。

ここで担ぎ上げられてジタバタ暴れる霧ちゃんがいつもアオキチあたりの頭をぺしんぺしん叩くのが好きだったんですけど、オフマイク拾える席で入ると色里ォ?!のあとにブツブツ文句言うのが聞こえてくるのも好きでした…。「えぇ…いいって…」って声が聞こえた時は興奮して手汗で双眼鏡が滑ったもんね…(しっかりして)。霧ちゃんどこで色里のこと知ったの。パンフレットでの発言を読む限り19歳くらいの想定らしいけど(見てる限りはたまに小5だったけどな)熊木の長とはいえ未成年を色里に連れて行くおじいとおとう、完全にカワイイ男の子連れていけばオイシイ思いできるからなのでゆるすまじ。興味はなさそうだけど遊女にさりげなく花のかんざしくらいはあげそうだからモテただろうと思うのだけどそれでいて興味なさげなきりまるさんかっけーです。

いつまでも書き続けるからそろそろ次行きますね…。

無界の里

手負いの霧ちゃんが運び込まれたとき、兵庫が太夫~♡ってなってるのを見て捨之介「ありゃ無理だな」のあと「無理だ絶対!」って言い切る霧丸さんかっこいい好き。

兵庫玉砕に今夜の飯と酒!ってなんだかんだで兵庫の恋路を面白がってるのかわいくて好きだったんですが(おてて全力で上げるから体全体がピーン!ってなってるの好きだったし伸び伸びになってるから宮野さんとの身長差が目立つのも好きだった…)、そのあとのアーッハッハッ!が喉の奥まで見えるくらい大きな口があいてるのが好きでした…。松岡くんは口も目も大きいところが良い、表情が読み取りやすい。

この前半、人の恋路で賭けをするんじゃねえ!って噛み付いてくる兵庫に対して薄く笑ってみたり、狸穴に「おれ霧丸」って自己紹介する時の顔が柔らかかったり*1*2するの、少しの間だけ使命とか憎しみを忘れてるのが子供らしくていいよね。唯一、霧丸が幼いことを感じられるシーンでとても好きでした。

一度、なんだかこのシーンも笑顔が少なく霧丸は緊張したままのように見えた公演もあったんだけど、じつは2列目というお席で見ていたのでわたしも緊張しておりそのせいでバイアスかかっていたかもしれない。でもそういう日もあるんだなと思ったし、それはそれでとても自然なことに感じたなあ。

そんなことよりこいつだ、って捨之介が霧丸を前に出したとき、霧丸がビクッとするのすごく我に返った霧丸の不安を表してて素晴らしかったですね。あのシーンは完全に肉食動物に見つかった時の草食動物で霧丸への愛しさマシマシだった…。背中しか見えないことが多いシーンだったけど、可憐すぎていたな…。

ここは上弦霧ちゃんとの違いが顕著で、霧ちゃん何回も兵庫に突き飛ばされてズベシャーって床に転がるし無界の男衆にがっつり担いで中に連れて行かれるし狂犬扱いされててかわいかったなあ。

無界の里脱出

無界の2階で温かい場所と食事を与えられるシーン、ここ、すぐ場面はまた回るのに一度ちゃんとこのセットが中央にくるようステージ動くのが嬉しかったです。

霧ちゃんがすごいスピードでごはんをかきこむの(ちゃんと三角食べしててえらい!)、たぶん荒武者隊と兵庫の様子から見ると空腹にはそんなに困ってなかったと思うから(兵庫は霧丸に分け与えないような人間ではないし、霧丸と道中ともにした時間は数時間ってわけじゃないと思う)、生きることへの執着とあとは使い果たした力の大きさなのかなあ。「落ち着いたあ」って目がとろんってなるのちょうすきだった。ごはんたべおわったあとねむくなっちゃうきりちゃん。ばぶばぶ。

そのあと、太夫に「人に親切にされたら、きちんとお礼を言うのが礼儀だよ、それが」「山に生きる者の掟じゃなかった?」って(ここの台詞が自信ない、掟じゃ繋がらないよね?)言われる時の表情は、霧丸がどう生きてきたかを想像させてくれる繊細な演技でしたね。

ここ、最初は霧丸はしてもらって当たり前の環境にいたから、ありがとうを言うことを知らなかったんだと思ってたんだけど、ありがとうを言うことを知らない霧丸だと思えなくなってきてもいて、もしかしたら生きるために必要な最小限以外は、失った郷と共にそういう小さな心遣いを忘れてしまっていたのかもなあって最近は思えもしていて。少しだけ怖い顔をするのは、直視した捨てきれない思いを目の前に置かれた戸惑いだったのかも。太夫が、この手を見ればわかるって太夫に手を掴まれたとき、息が止まったみたいに怯えるのは後々、捨に手を掴まれた時の霧丸につながってくる大事なシーンですね。

「なぜ…?」って一度、縋りたくなってしまうような目で太夫を見るんだけど、すぐばっ、って体ごと振り切ってしまう霧丸が一瞬で壁を作ったの、とても切なくて…すごく切なくて…このシーンはひたすらまつおかくんの腕にあるはんこ注射のあとに全力で興奮してましたね…(まつおかくんとまつおかくんのご両親とまつおかくんのファンに土下座したほうがいい)

そのあと、わかった、って小さく頷く霧丸のやわらかい空気は、この時点での霧丸にとって気持ちは嘘じゃないんだと思う。あんなに嘘を付くのがへたなひとが、取り繕った嘘だけで返事をしてたらああはならなかった気がする。

そのあと、絵図面を開いて確認したあと、階段を降りる時の動作の割には静かな音も好きでしたね…。まつおかくん、本能的に足を傷めない動作をするのかあらゆることに音がなくてすごいなと思ってた。(軽いのもあると思うけど)

あと、無界から抜け出す時の霧丸の無界に対する所作もすごく好きでした。笑顔で見送られるところと少しだけ気まずそうに手を上げるところ。無界の人たちが短い間で霧丸をかわいがってたことが伝わってくるし、あとやっぱ嘘つくの下手だから(笑)、抜け出しますよってことばればれでかわいい。捨が駆けつけるのは本当に「こんなことだろうと思った」んだろうけど、無界の人たちが捨に「あんたの連れ、なんか抜け出してたよ」って告げ口した気がする。かわいい。

短いシーンの中に詰め込まれた情報の数々を松岡くんが丁寧に演じているので受け取るものが多い光景でした。

蘭兵衛との邂逅

まず、ここは無界を出て「そろそろこことも、おさらばか」って言う霧ちゃんの、この「、」に込められた空白に全ての想いが出ていてですね…。ああ、愛着を持ってしまったんだなあっていうのが伝わってきてすごく悲しかったです。捨てないと前に進めないことを、霧ちゃんは知ってるんだ。知ってても寂しいと思うくらい無界には心地よさがあったんだなあって思えたのは嬉しかったです。楽は、その空白で俯いて息を飲んでいたね…。ホンモノのおさらば。

ここ、霧丸と蘭兵衛の戦い方が対照に描かれているのがすごく良かったです。強さの質が違った。この蘭兵衛の強さって鮮やかだから、霧丸は強く警戒するのは当然なんだよね、だって熊木を襲った人たちときっと同じ戦い方してたと思う。

霧丸は強いけど、霧丸の強さは生きるための強さだから、蘭兵衛の戦うための強さとは違う。

霧丸は「強さ」にすごく執着する人なので兵庫のことも捨のこともこの上なく大きな目で見てたけど、蘭兵衛の戦いはずっと警戒して見てるんだよなあ。ここは、霧丸が人を見る時に本質を嗅ぐ嗅覚と本能の鋭さがわかりやすくてよかったと思う。

お前ら、天魔王と知り合いか?って聞いてる間、声が上ずって呼吸が荒くなって何度も息を飲み込むところがあのとき湧き上がった感情の激しさは、天魔王への恨みが感じ取れる素晴らしいお芝居でした。

捨が「確かに無界の里は救いの里だった」と言うところで寂しそうにする顔と、「ほっとけつってんだろ!」って叫ぶ顔は、自分に優しくあるものを切り捨ててしまいたい切実さに溢れておりこういうコントラストの表現がまつおかくんは抜群だと思う。

奪われた絵図面

まずここの霧ちゃん、取ってくださいと言わんばかりの感じで絵図面が懐から飛び出てるのほんとうにばかだよね……かわいすぎだろう…。渡京が取らなくても絶対いつか落としてたと思うし扱いが雑…。

ここは霧ちゃんが大好きな渡京たんとのシーンなので割と勝手に喋ってるところが多くて(笑)、オフマイク拾える席で入った時は捕まってすぐ「なにこれ?なにこれ?」って言ってたり、水車にベシ!ってされて小声で「いたい…」って言ったりギャグパートはよく喋るのかわいかったなあ。

女子力高い日はこちょこちょこちょ~のあと「エヘッ」って笑って、そうじゃない日は「アハッ」って笑ってるのどっちもハイパーかわいくてほんとうに渡京ちゃんとの脱出コンビ好きしかなかったわ…。

2/19の夜は全体的に泣きそうだった霧ちゃんですが、この日、太夫が駆けつけて「霧丸を離しなさい!」って言ったときにくちがわなわな~ってなるのがよかった。安心したんだねえこわかったねえ。

このあと、絵図面を追うより無界に戻ることを選んだのは霧丸の意思なので、太夫に怒られて「悪かったって」って言うのが日に日に「だからそれは悪かったって!」「うるせーなー」「うるっっせえ!」「うるせえなあ悪いかよ!!」ってどんどん口悪くなっていくの最高に好きだったんだけどwww、照れ隠しでもあり、絵図面を奪われた気まずさをかき消す方法でもあったんだろうなあ。

なんだかんだ、おとなしく戻る霧ちゃんもしんぱいしんぱいしんぱいだった捨もそれぞれのキャラクターが出てたいいシーン。

再び無界

ほとんどのキャラクターが集まるシーンなのでここで色んな人たちの内面が垣間見えるの楽しかった。

あと、狸穴の隣に座るとき、失礼、って感じで手を挙げるのが何度見たってめちゃくちゃに好きでですね…。格調高いやり取りで最高でした…。なかなか出せる雰囲気ではないと思います。

あといん平さん出てきた時の捨霧ちゃんな…ほんとかわいかったね…ふたりそろって怯え過ぎて無界屋の前できょどきょどしてるんだけど、捨之介が霧ちゃんの後ろに隠れるのがしんどいかわいさだった。霧ちゃんが守る側なのかよ…。一度、兵庫が霧ちゃんの手を引っ張って助けて助けて!ってしたら霧ちゃんがヤダヤダムリムリヤメテーってなっちゃってそれを捨が後ろからぎゅーって抱きしめて連れてかれないようにしてたの、あんなかわいいものを見て今でも生きてる自分がふしぎ。

そのあと、いん平さんのおしりがご臨終されたときにかたまる霧ちゃんもかわいかった。どんぐりおめめ。あの時の霧ちゃん、作画ジブリ

その後の兵庫さんアドリブは全てかわいい霧ちゃんオンパレードでしたが、わたしが好きだったかわいい霧ちゃんベスト3は、

1.「ズラエッティ!」のあと兵庫が自分のポニテを見せてこの辺がアリエッティっぽくない?って言ったら自分のポニテをさわさわしてた霧ちゃん

2.「蘭兵衛お誕生日おめでとう!」のあと狸穴に「蘭兵衛おたんじょうびなんだ~」って話しかけてた霧ちゃん

3.「羽生選手金!宇野選手銀おめでとう!」のあと狸穴に「これ?これだよね?」って両手をついーって広げて滑る真似をしてた霧ちゃん

の三本です本当にありがとうございました。

ここは前半の明るいパートと後半になって霧ちゃんがリベンジャーとなる部分が一気にくるで感情をついていかせるのに大変だったけど、もしかしたらこの前半で心を開いたからこそ、あんなにしっかり感情を爆発させることができたのかなあ。

後半、霧ちゃんはこれでもかってくらい辛い過去と事実と向き合うんですよね。「虫ケラのように」なんて、絶対言いたくなかっただろうのに。この言葉本当に悲しい。だって、本当は殺す側が嘲りとして言う言葉だもん。あっけなく散った命と、向き合って発した言葉は、霧ちゃん自身に残酷だけど、それを言えるくらいには強くなった。この言葉を言うとき、自分の手を見るのが好きでした。自分に力が足りなかったことを、その手を見ながらどれだけ悔いてきたのだろうか。

殺すんじゃねえ、止めるんだって言われて息を呑むところとか、おめえみてえな若えのが!って肩をつかまれるところとか、霧ちゃんはいちいち真っ直ぐに受け止めて驚いた顔をするので、こんなに何度も初めて聞いたみたいに響くなんてすごいなあと思う場面だったなあ。

兵庫に「あんたらには時間稼ぎをしてもらえればそれでよかった」って冷たく言い放つときも、霧ちゃんは兵庫をちゃんと見る。これは霧ちゃんがあらゆるものから目を逸らしてないことを信じられるところだった。

狸穴に「赤針斎殿までやられたのか!」と聞かれて、力なく頷く霧ちゃんはやっぱり嘘がへた。

太夫に「雑賀も熊木も、同じ山の民よ。あんたみたいな子救えなきゃ、この里作った甲斐がないよ」って頬を叩かれる時のリアクションは、霧ちゃんがおとなになっていく過程でした。

わたしが見た2/3は、あそこは「んあっ」ってちょっと嫌がりながら離れてたけど、楽に近づくにつれて少し寂しそうに受け流すの。遠慮の表現が違うの好きだったな。小さく笑うときも、笑えなくてじっと目だけ見るときもあった。

捨が見得を切ったあと、「ハンッ」って言う声が大きいのも嘘つくのが下手でよかったね。笑 感情、動いてしまったくせに!ってほっぺつんつんしたい霧ちゃんだった。

2/19は、走って去っていく捨之介を少し長めに目で追ってました。それがなんだか、ちょっとぐっときた。霧ちゃんは、捨之介の親だから。笑

これはびっくりするお話なのですが、柳の下で太夫と蘭を霧丸が見ているのは下弦だけです(少なくとも2月に関しては)。上弦は霧ちゃんがべそべそ泣いてるらしいのですが(わたし上弦のここの霧ちゃん覚えてないんだよな)、下弦は、ここで太夫と蘭を見る霧丸がいたからこそ、髑髏城へ向かう蘭を霧丸が追う事実がちゃんと繋がるんだよね。

下弦の霧ちゃんは、蘭兵衛のことを警戒しているし怖いともきっと思ってたけど、でもここで太夫に向き合う蘭兵衛の優しさを知ったから。蘭兵衛はこの上なく無界を愛していて捨之介を信じている人だとわかったから。霧丸はここでようやく蘭兵衛を自分の心のなかで愛していい側の箱に入れたんじゃないかと思う。霧ちゃんは、敵のことはあんな顔で見ないと思うから。

太夫に霧丸!って呼ばれて手を引かれるときの顔、無防備でかわいいよねえ。ほんと、いい話聴くとすぐ信用しちゃうんだよな(笑)。月見の宴を手伝うように言われて、やだよめんどくせえ!って言うのほんとわるがきちやんで最高。

月見の宴

無界屋バルコニーで佇む霧ちゃん、完全にジュリエット。キュリエット。

ここの霧ちゃんが笑わないのすごく切なかったのですが、霧ちゃんは居場所を作ることに対して遠慮がずっとあるんだよね。太夫のハグを素直に受け止められないのもそうだし、あと気になったのが、冒頭荒野で荒武者隊が兵庫にわんわん懐くときもすごく寂しそうに見てたんだよ。霧ちゃんは、別に荒武者隊に歩み寄ることもできたけど、熊木の長として残した熊木をずっと胸に抱えてる。

遠くを眺める霧ちゃんの目に映る月には何が見えたかな。兎の影に、山の民が霞まなかっただろうか。

そして無界のジュリエットはロミオをただ待っていないので、蘭兵衛を追いかけるのであった。ここ、いつも最後まで障子を閉めないのでまた太夫に怒られるやつだな…と思ってみてましたね…。

あと、霧ちゃんが木の後ろに隠れてるとき気配消せてなさすぎて蘭兵衛きづいてたのでは、って思うけど蘭兵衛のことなのできづいてないかもね。蘭、髑髏城を探っていただろう!って天魔に聞かれて「えっ」って反応するけどまたあの人来てる…いつも城の前に食べかけのバナナ忘れていくし生駒おこ…って思われてた可能性あると思います…。

髑髏城へ

ここの霧ちゃんの背中、迷いなくて好きだった。霧ちゃんが走っていく姿で一幕が終わるの、何度も何度も幕間に余韻に浸れて嬉しかった。

無界で捨に「お前はもう前に向かって走り出したんだ。今更地獄に戻ることはねえ」って言われて(これ言われたの霧ちゃんであってますよね…?)、このときの霧ちゃんは蘭兵衛のために走ってたと思う。

蘭兵衛と、蘭兵衛を愛する人達のために。

 

 

 

 

 

ちょっと長くなったので二幕は別エントリにします…。いつ書けるかな…。

*1:この時の狸穴に対する警戒心のなさ、高貴な人間を嗅ぎ分ける嗅覚なのかそもそも正体を知ってたのか私の中で解釈がわかれる

*2:赤針斎の影武者であるおじいは、たぶん家康と会ったことがある。そこに霧丸がいたかはわからないけど、いたんじゃないかなあ